本記事では11/9(土)に行われたCOWDAY CREATIVE FEST2024の講評の一部をご紹介。映像作品はすでに公開されている作品もありますので、コメントと併せてお楽しみください。
ジャッジ(6名)
- ヘッドジャッジ:KIYOFILM 川崎清正
- クリエイティブディレクター:早川和彦
- カメラマン:川名健太
- アーティスト:DAG FORCE
- プロスノーボーダー:佐藤秀平
- プロスノーボーダー:関功
招待クリエイター作品
『生成 -kinari-』 (千葉諭)※COWDAY SNOW CREATIVE FEST2024大賞作品
川崎「清原勇太くんの日常的にやってることを記録している。非日常だけど、日常感があて、日常的にやってるっていうのが際立っている。音もいい。小手先でどうのではなく、ストレートに見せれていて、演出がいい。iPhoneの映像もいい。日常のリアリティを切り取るという点ではiPhoneは、一番いいカメラ。その映像がところどころ入ってるのが日常感の演出に役立っている。シネマカメラじゃなくてもいい。日常なんだけど、その中に非日常が入ってる。ライダーの美学や哲学もマッチしている。千葉さんと清原勇太くんの組み合わせだからこういうものになる。ライダーとカメラマンの関係性の大事さを感じた。」
佐藤「めっちゃいい!清原くん先輩だけど、そういうの別でうまい。ラインの中に跳びとかスラフも入ってたり、ここでターンして欲しいってとこでしてくれてる。清原くんの日常とか遊びってこれなんだなって生活がよくわかっていい。さとるさんと清原くんの関係性もずっと一緒にいるからこれが作れるんだと思う。プロですね。さすがっす。」
DAG 「音楽や色味、文字のトーン、映像の色味、映像エフェクト、全体に統一されたムードがあって独創的に感じました。特に中盤で音楽の変わり方がとてもうまく、そこからより『攻めた日常』への変化がスムーズかつリズミカルで全体のムードを崩さないままに進んでいくのが素晴らしかった。細部へのこだわりが感じられ、ワクワクします。また音楽からも北海道っぽさ、その雰囲気が伝わってくることもすごいなと思いました。」
『渋峠』(平井里空)- 単焦点レンズで切り取る幼馴染とのスノーボード
川崎「作品の世界観が出来上がっている。映像を見ている人が、クリエイターが作った世界に没入できる。そういう意味で、ぶっちぎりで作品性が高い。このトリップの空気感、こういう時間だったんだなっていうのが感じ取れる。言葉では説明不要で、言語化できない映像のよさがある。そのために映像はあると思う。そのレベルの作品になっている。撮り方も写真みたいな固定アングルで、今っぽさがある。スクリーンで見た時、さらにいいものになる。引きの画の見せ方は、舞台での見せ方に近く、見ている人がライダーを見てもいいし、景色も見てもいいし、哲学が表現されている。見るところを自分で探せるところがいい。カラーや質感にもこだわりと意思が感じられる。滑りもトレンドど真ん中の感じがある。このライダー2人がやってるからかっこいい。そこもいいポイント。出演者はライダー2人だが、ディレクターがちゃんと世界にいて、出演者は2人だけど、3人に見える。みんなで過ごした時間を感じられる。ちゃんとそこにもう一人いる感がある。ライダーがカメラマンを見ていたり、その時レンズではなく目を見ている。カメラマンの声も入ったりしていて、映さなくても存在がある。みんなのトリップで過ごした時間を感じられる。ちゃんとアートという作品の方向性がある。小手先のどうだではなく、直感の素晴らしさ、強さを感じる。」
川名「単焦点を使った作品ということだがヨリヒキがしっかりとしていて作品性を感じた。 人物カットにおける手持ち撮影での臨場感、景観を意識した画角などが良かった。 グレーティングにおいても質感がとても良くしっかりと編集したのだろうと感じれました。」
DAG「映画のような世界観を感じた。音楽の使い方もいい感じ。雪解けの山の景観や、雰囲気と音楽のアーティな世界観をマッチさせていて、そこを軸に広げていっているからこそ、統一した世界観が出来上がってきている。ただ前半の音ハメを意識しすぎてる感じが気になった。あと、世界観がしっかり出ているからこそ、声や自然音の入れ方や音量に気をつけてほしいと思った。こだわりは失敗しても良いから全面に出してほしい。もっと色々な作品を見てみたいと思った。」
佐藤「ガッツリのシーズンの撮影が終わって残雪のタイミングでみんなですべるのいいよね。せっかく若いライダーで上手いのも知ってるから激しい滑りも期待しちゃった。でも滑りうまいね。」
『lowedservice.ep02』 (Lowedservice) - 魚沼を中心に活動するストリートスノーボード作品
川崎「ローカル感やパッション、エナジーが全面にでている。ローカル感、シーズン通して皆でやってる感がでている。パッションとかエナジーはいろんな出し方があるけど、彼らがカメラの前で動いているだけで伝わってくる。シンプルな戦い方ですごく強い。いい意味で泥臭さもある。いなたい。生な感じがでていていい。高校野球みたいな感動感。音も小手先な感じでなく、rawな感じがいい。シンプルなビートで辺に足し算していないところ。小手先がなくても人の心を動かせる作品だと思う。エンディングの尺が長く感じたが、周りへの感謝は伝わった。」
DAG「音楽はオリジナル?Lowedって言ってるように聴こえてくる。ローカルのオリジナリティやアングラ感を押し出すなら、フォントなどにももっと気を遣ってほしいと思った。あと、同じ音楽が続くのは飽きてしまう。映像だけ観たら飽きないのだけど、音楽が一辺倒なせいで飽きがきてしまうので、もっと音楽のバリエーションがほしい。エンドロールがちょっと長いかな、、無理に長くしなくても良いと思う。」
関「ハードなストリートスポットが印象的な作品 僕もストリートやっていた経験があるから承知の事ですが、大きいスポットは映像で見るより3割増しくらい大きく感じるものです。最後のスポットはイカれてると思った。あとドロップ系のランディングの山を手前に作りがちだと思いました。笑 僕にとってこの作品はもっと細かい所まで掘りたいと思ってます。」
『Heart Films "KEEP ON JOURNEYING"』(田島継二)- 北極圏ロフォーテン諸島での4年ぶりの旅
川崎「北極圏とか普通の人が行けない場所に滑り手と行って、作品を作れるというところに既に価値がある。それができること自体がすごい。そこに大きなアドバンテージがある。ここに行って撮ってこれるだけで正直、価値がある。 滑るフィールド、海などはビジュアルがすごく良い。北極圏というロケーションならもっと普通の人にとっておもしろいものがあるのではないかと思った。消防車の音や、寒さとか手触り感のあるもの。ただアルパインで滑っただけになってしまっているので、細かいところ、空港出て街がどうとか、フィールドまでの道中などがあると更に引き込まれる。ビジュアル1本勝負になると、世の中の人は見慣れてしまっているので、他の街の雰囲気とかそういう些細なところが差別化のポイントになるかもしれない。見たい人の気持ち動く、雰囲気やストーリーの要素があると更に良かった。」
佐藤「メンバーが経験値高いので、日本からこの初めての場所に行ってアクセスできるのがさすが。
もっとラインを長めに見たかった。ロングラインなのにカットを編集で刻んでるから山のデカさが伝わりにくい。海外だと思ってみちゃうので、もう少しすごい滑りとかロケを期待してしまった部分はある。」
川名「ドローンカットは観ていて壮大感を感じるナイスアングルでした。淡白になりがちなドローン撮影ですが背景の構図や地形をしっかりと捉えて撮影している印象でした。 ライディング撮影部分においてもスムーズなコントロールでライダーを捉えており見やすかったです。 全体的にシャッターが早いのかパキパキとした印象でした。 質感という点ではロケーションが良いだけにもっとグレーティングなどもこだわれるポイントかと思いました。 Goproのアングルなどを加えて、ライダー目線のスピード感のある寄りのアングルも見てみたかったです。」
『GOOD PLACE』(島方啓輔) - オリジナリティあふれるストリートスノーボード作品
川崎「ポップな見せ方というところでは素晴らしい見せ方。ポップですごくいい。ポップなものって、他のカルチャーから見ても見やすい。ストリートスノーボーディングの1つの形だと思う。業界外の人が見ても、こういうのがあるんだっていうおもしろさがあっった。それぞれ滑りも個性的で、トリッキー。ベア・マウンテンとかカリフォルニア好きなんだろうなとか、いろんなスノーボードの好きが見える。 ちょっと尺は長いかもと感じた。いろいろ撮ったから見せたい気持ちはわかる。全体的にポップで見やすいので、適正な尺があるかもしれない。なにも知らない人が観ると考えると少し長く感じる可能性もある。撮り方にもう少し、バリエーションがあればもっと尺も短く感じさせることができるかも。編集がいいので、撮り方とか削いでいくところも大事。全体的にはすごくいい作品です。」
関「しっかり作り込まれた作品を見た満足感がある 特に最初のパートはストリートでも色々なアイテムの使い方や面白いアイディアがあって見てて飽きなく、難しいトリックもやっていたのでしっかりライダーとして技術が高いのも感じた。島方君が。また見たくなる作品だと思った。」
早川「盛りだくさんで見応えのある内容でした。映像のテロップやシーンの切り替わりの部分でDIYなグラフィックやエフェクトで、工夫を凝らした演出をしようという意図は理解でき、全体の世界観も一貫していて好感が持てます。ですが、実際の滑りのシーンとなるとトリックやシーンを説明的に見せようとしすぎており、世界観のコンセプトであるDIYの良さや演出が生かされていなかったのが残念です。エフェクトなども多用し、撮影のアングルなどももっとアクロバティックに、煽るようなアングルも入れるなど遊びの要素を多くし、見る人を楽しませ引き込んでいくような演出が滑りのシーンで見られると、よりエンターテインメントとして楽しめる映像作品になったのではないでしょうか。アニメーションやエフェクトなども、スノーボード以外のMVや映画など様々なカルチャーからインスピレーションがあるかもしれません。もっと映像で面白く楽しく誰かを楽しませようとする映像作品に仕上がれば、実際のプレーヤーでなくとも、子供から大人まで様々な世代の人々届くのではと思います。」
『My Story』(星野高行)- 母でありプロスノーボーダーである田中幸に密着
川崎「田中幸の行動内容がわかりやすかった。母親でも人に山を連れてったり、スノーボーダーとしての活動はわかりやすかった。田中幸という人がなにをやっているかわかった。カラーグレーディングに意思を感じる。そういう意味ではいい。ただ、田中幸を知っている前提になるので、カルチャーの枠を越えられる演出がある方がよかった。彼女がなんでそういう活動をしているかの部分やパッションをもっと伝えられるとさらによかったと思う。」
川名「尺が長くなるほど展開に飽きを出させなくするためにインサートの差し込みが重要になる中で飽きる事なくスムーズな印象でした。グレーティングに関しては若干のばらつきがあるのが少し気になったのと、もう少し手持ち撮影においてのブレを少なくした方が見やすい印象。またインタビューの内容を引き立てるためにもう少しテロップなどで情報を入れ込むのも検討してもよかったかもしれないです。」
早川「こういった人物に迫るドキュメンタリーの場合は、構成が非常に重要だと思います。まず自分はこの映像の主人公であるプロスノーボーダーの田中幸さんのことは知っておらず、導入からどのような人物なのかを把握することができず、この映像中で最後までどんな人物像でそのような経緯で今があり、どんなメッセージがあるのかを読み取るのが難しかったです。子育てをする現実の生活がありながら、スノーボーダーとして夢を追いかけ続ける姿はとても素敵です。でもそれ以上に、何かに共感しどんな人でも映像のストーリーに入り込むことができる、感動のピントがある、見終わった後に何かが残るような構成にすることもできたのではと思います。」
一般選考通過作品
『Comes Around』 (伊藤冬樹) - ライフステージの変化と共にあるスノーボードを表現した作品※Blackmagic Design賞受賞
川崎「47のローカル感。この場所を愛しているのを感じる。それが全員から伝わってくる。HAKUBA47の広告はこれでいいんじゃないかとも思う。すごくリアルだと思う。そういう目線で見て、ウソがない。ウソっぽいものは響かない世の中なのでいい作品だった。尺に関しては少し長いかもしれないとは感じた。」
早川「自分たちがいつも楽しむ山への愛や眼差しがとても感じられる作品です。自分たちの滑りや楽しさを映像に表現するだけでなく、その背景やシーンに存在する雪山や雪面、環境もが魅力的に感じられ伝わってくる映像はとても素晴らしいです。ジャンプのシーンの編集についても、飛ぶ前から着地まで見せるシーンもありながら、飛んだ直後の部分的なシーンを重ねたり、違うアングルからのシーンに切り替えたりと、単調にならない編集と音楽に合った構成で疾走感が止まることなく、最後まで気持ちよく見ることができる作品に仕上がっています。雪山のプロモーションムービーなどへも展開可能だと思います。」
川名「撮影方法が様々で色々なアングルが見れて良かったと思う。 キッカーに入って自ら追っている部分などは経験がないと中々攻めれない部分なので臨場感があって好きでした。 エアーのスローのタイミングやサビの部分でのカットインなどもハマっていました。 BGMのテンポに対してカットの切り替えが若干ズレていたのが惜しい印象。アングルも様々でテンポ感がいいだけにリズム良く見れたらもっと最高でした。 キッカーは少し追い撮りが多い印象だったので違うアングルも見てみたかった。」
『The DAYじゃん』 (竹園和貴) - 東海地方のスノーボーダーを映した作品
川崎「ナマの喜びやエモーショナルな部分が小手先なしで出ているところがいい。人の心を動かせるものを感じる。これを見て学ぶものがあると思う。初メイクの最後の人など、それぞれにキャラクターがある。意図はしてないだろうけど、演出として見えた。同じ撮り方などが多いので、作品としてはブラッシュアップできるポイントが選曲を含めまだある。」
早川「スノーボードを楽しむ初期衝動や素直な感動が、映像からそのまま伝わってくる作品です。完成されたものや、気を衒って編集されたものにはない、生の感情が反映された魅力があり、今この瞬間にしか作ることができない価値があります。例えるならポカリスエットのような青春感を感じました。こういった映像も同世代間で共有されることによって、スノーボードを始めるきっかけとなり新しいファンを増やすことにもつながるのではないかと思います。」
関「スノーボード楽しい!!ってのが伝わる作品最後のおそらく初Bs720メイクする映像はリアリティが凄くあって、喜びを共感出来る感じが良いと思いました。TikTokとかで見たら見やすそうだなと思いました。スリーのスローの所長く見せすぎる感じ。個人的に好きな作品です。」
写真作品
会場では映像作品だけでなく、7名のクリエイターによる8作品の写真作品を展示。スノーボードのジャンルを越えた個性豊かな作品が並び、来場者の目を楽しませました。
『鯨の背』(HOLY)※写真部門大賞受賞
コメント:写真としての完成度が高いだけでなく、セルフショットというところがすごい。いい意味でこれは大賞をあげざるを得ないという作品。素晴らしい。
展示作品紹介
『絵画』(岡崎 夢)
コメント:インパクトの強さがずごく印象に残る作品。絵画というタイトルがマッチ。
『螺旋』(西中 卓也)
コメント:軌道上にある雪の舞い方が星のように見える美しさがあり、ライダーとの構図もいい。
『CLASSIC IS NEW』(花坂 孝)
コメント:リアリティが伝わってくる作品。現場の状況を想像させる奥行きがある。
『Hayato Nagasawa』(安江 大和)
コメント:クラシカルな王道なストリートの瞬間を表現できている。
『撮影現場』(安江 大和)
コメント:全体からストーリーを考えさせてくれるいい写真。
『一閃』(山川 直央人)
コメント:非常に躍動感を感じられた作品。ここからどういうターンに入っていくのかなど、この前後を想像させるところもよい。
『遊び相手」(庭田 啓太)
コメント:雪だるまをあえて置いたところがおもしろいと感じた。